第4回公演
ジャック・オッフェンバック
「ホフマン物語」
全幕(日本語訳詞上演)
オペラプロジェクト2
1995.12.10(日)午後5時開演
所沢ミューズホール
全席自由1,000円
スタッフ
制作統括・芸術監督
・・・・・八木原 良貴
音楽監督
・・・・・野町 琢爾
アンサンブル振付
・・・・・藤井 明子
日本語歌詞作成
・・・・・三浦 真弓・大林 弘子・杉浦 まり
芸術監督/制作統括/演出
・・・・・八木原 良貴
キャスト
ホフマン Tenor
・・・・・丹下 知浩
オランピア Soprano
・・・・・松尾 恵
ジュリエッタ Soprano
・・・・・杉浦 まり
アントニア Soprano
・・・・・大林 弘子
ニクラウス/ミューズ Mezzo Soprano
・・・・・藤沢 恵
リンドルフコッペリウスダペルトゥットミラクル Baritone
・・・・・上田 純也
スパランツァーニ Tenor
・・・・・八木原 良貴
アンドレス/コシニーユ Tenor
・・・・・荻島 創一
ヘルマン/ピティキナッチョ Baritone
・・・・・青木 亮
シュレミール Baritone
・・・・・岡田 勇
フランツ Tenor
・・・・・仲嶋 真輝
クレスペル Baritone
・・・・・北 教之
アントニアの母 Mezzo Soprano
・・・・・元田 牧子
ナタナエル Tenor
・・・・・釜田 雄介
ルーテル Baritone
・・・・・山崎 大作
ステラ 語役
・・・・・藤井 明子
ガレリア座管弦楽団(コンサートマスター:本山寿光)
ガレリア座合唱団
ガレリア座バレエ団
上演に寄せて
見果てぬ夢。
日々、なんとなく過ぎていく現実の中で、少年少女でない者が「夢」を探すのは難しいものです。私は今から3年半前、そんな「夢」の卵を見つけました。まだ、ガレリア座の全身、ガレリア・プレイヤーズの名前さえ付いていなかった頃に、ただ憧れていたオペレッタの真似事をしてみたいという思いから上演したオペレッタのアンサンブル数曲。いま秘蔵のVTRを見返すと顔から火が出るほど稚拙な舞台ですが、そのときの現在にも増してキツかった練習と、お客様の温かい拍手と、そして何より一緒に舞台を作った仲間が、私の「夢」の卵になりました。
あれから7回め、ガレリア座になってからは4回めの今回、とうとうオーケストラ、合唱、ソリスト、それに念願のバレエ団も一緒に舞台を作ることになりました。すべてのソフト(舞台を作る人間のこと)を一つの団体で賄うというのは、ヨーロッパのオペラハウスでは至極当然のことでも、歌い手中心に発達し、すでに縄張りができてしまっている日本のオペラ界にあっては、これから100年たっても望むことはできないでしょう。そんなオペラの夢にアマチュアのガレリア座が挑戦することになりました。
ホールも大きくて素敵なオペラ向きのホールです。そして作品は、近年プロのオペラ団体である二期会が財政上の理由から上演を取り止めたフランス・オペラの傑作「ホフマン物語」です。
すごい事になったなぁ、と思います。こんな大それたことしてていいのかな、と思うときもあります。でも私が演出を付けていて、練習場の空気がだんだんと熱を帯びていくのを感じるとき、私は天国にいるかのような悦びと興奮のなかで、なーんだ、昔となんにも変わっていないじゃないか、と妙に安心するのです。
そこには「舞台」という、人の記憶のなかにだけ留まって、あとには何も形の残らない、たった3時間そこそこの幻の世界を作るためだけに真剣に遊ぶ人々の思いを感じます。アマチュアとかプロとか、そんな垣根ではない、舞台への愛情を感じるのです。
それにお客様。ガレリア座の公演に来てくださる方のアンケートを見ると、クラシックのクの字も知らなくても楽しかったと心から喜んでくださり、また通の方は鋭いアドバイスを飛ばしてくださる。でも共通して言えるのは、どうもガレリア座のことを結構真剣に愛してくださっているんですね。舞台の内外のこんな交流こそ、実はヨーロッパ・スタイルのオペラの粋な楽しみ方ではないかと思うんです。今日もそんな公演が出来ればと願っています。
本日はご来場まことにありがとうございます。
・・・・・ガレリア座主宰 八木原 良貴
あらすじ
ホフマン物語
プロローグ・エピローグのある3幕のオペラ
初演 パリ オペラ・コミーク劇場 1881.2.10
作曲 ジャック・オッフェンバック(1819.6.20 – 1880.10.5)
〜プロローグ〜 オペラ座近くでルーテル親父が営む酒場
アンドレスが、詩人ホフマンに、オペラ歌手ステラからの恋文と部屋の鍵を届けにくる。ところが、ステラに横恋慕している上院議員リンドルフが一足早くやってきて、手紙を横取りしてしまう。
リンドルフは、今宵こそホフマンからステラを奪おうと企んでいる。オペラを楽しんでいる学生たちが幕間にやってきて、いつもの調子で飲めや歌えの大騒ぎを始める。そこへ、ホフマンが親友ニクラウスと連れ立ってあらわれる。何かに脅え、憔悴しきった様子のホフマンだが、学生たちに得意の歌を請われ歌い出す(『クラインザックの物語』)。
歌の途中、ホフマンは昔恋した3人の女性たちを回想しはじめ、リンドルフや学生たちに聞きとがめられる。3人の女性との出来事をよく知るニクラウスの懸念をよそに、ホフマンは3つの不思議な恋物語を始める。
〜第1幕〜 最初の女性・オランピアの物語
科学者スパランツァーニの館。 スパランツァーニとコッペリウスは、自動人形オランピアを共同で完成させる。人形の要である「眼」の部分は、コッペリウスの自信作である。
窓越しにオランピアを見て、生きている女性だと思い込み、恋い焦がれているホフマンが訪ねてくる。コッペリウスも訪ねてきて、ホフマンに魔法の眼鏡を売りつけたり、スパランツァーニにオランピアの「眼」の代金としてもっと金を出せと迫ったりする。困ったスパランツァーニは、不渡りの小切手を渡してごまかす。
完成したオランピアの披露パーティーが始まる。オランピアは美しいアリアを歌い、客の感嘆をさそう(『小鳥はあかしでの木にとまっている』)。ホフマンは、魔法の眼鏡のせいで一層美しく見えるオランピアに愛を告白し一緒にワルツを踊るが、途中でテンポが速くなり放り出されてしまう。
気がつくとオランピアは、小切手が不渡りであることに怒ったコッペリウスに、バラバラに壊されていた。やっとオランピアの正体に気づき、ホフマンは一度めの恋を打ち砕かれる。
〜第2幕〜 2人めの女性・ジュリエッタの物語
ヴェネツィア、高級娼婦ジュリエッタの館。
ジュリエッタは、悪魔ダペルトゥットの指示で次々と男を誘惑し影を奪い取っている。つい最近も上客シュレミールの影を奪い取ったばかりである。今宵も娼婦たちと客が戯れる中で、ジュリエッタとニクラウスが美しい舟歌を歌っている(『舟歌〜美しい夜、恋の夜〜』)。
ホフマンは「女などに惑わされはしない!」と毅然とした態度をしめし、対抗心むき出しのシュレミールのことなど意に介さない。 一方、悪魔ダペルトゥットは、女を操る美しいダイヤモンドの歌を歌い(『輝けダイヤモンド』)、ダイヤと引き換えにホフマンの影を奪うようジュリエッタに命じる。
ホフマンは、ジュリエッタの涙に惑わされついに愛を誓う。鏡のなかの影が無くなり動揺するホフマンを皆があざ笑うが、それでもジュリエッタへの愛を捨てきれないホフマンはシュレミールを殺し、彼女の部屋の鍵を手に入れる。しかし、ジュリエッタはホフマンを捨て、下僕ピティキナッチョに抱かれて去っていく。
〜第3幕〜 3人めの女性・アントニアの物語
歌姫アントニアの家。
体の弱いアントニアは、病気が悪くなることを恐れる父クレスペルから歌を禁じられている。それでも、亡くなった母のような歌姫になることを夢見ているアントニアは、今日も歌ってしまう(『小鳩は飛び去った』)。
歌声を聞きつけたクレスペルがアントニアを叱り部屋をでていったあと、ホフマンが訪ねてくる。再会を喜び、アントニアとホフマンは愛の歌を歌う。 クレスペルが部屋に戻ってきたので、アントニアとの交際を快く思われていないホフマンは隠れる。
そこへ、医師ミラクルがやってきて、怪しげな薬を勧める。娘を守ろうとするクレスペルが必死で追い払うが、ミラクルは再びあらわれ、アントニアに歌を歌わせようとする。ミラクルの魔法により蘇った母の声に導かれるままに、アントニアは激しく歌い出し、とうとう倒れてしまう。
クレスペルやホフマンが駆けつけた時には既に遅く、アントニアはゆっくりと息をひきとる。
〜エピローグ〜 再び、ルーテル酒場
3つの恋物語を話し終わったホフマンは、酔い潰れてしまう。これまで親友ニクラウスに姿をかえて、ずっとホフマンを見守っていた芸術の神ミューズが「恋などにおぼれず、本来の本来のあなたの力、芸術の力を思い出しなさい」と語りかける。
オペラ座で大成功をおさめたステラがホフマンを迎えにくるが、ニクラウス(ミューズ)はステラにリンドルフを紹介し、共に出ていくよう促す。こうして、ミューズは芸術の担い手としてのホフマンを手に入れ、『ホフマン物語』は幕を閉じる。